用語の解説

1.遺産分割

遺言で各相続人の取得する財産が具体的に特定されている場合は、遺産分割協議は不要ですが、遺言がないような場合は、遺産分割協議によって、誰がどの財産をどれだけ取得するかを協議し、財産を分割することになります。

2.遺言、公正証書遺言

民法に規定する遺言の方式には一般的なものとして次の3つの方式があります。
1.自筆証書遺言
自筆(パソコンは不可)で遺言書の全文、日付および氏名を書き、これに押印する方式をいいます。家庭裁判所での検認手続きが必要です。
2.公正証書遺言
公証人に作成してもらい、公証人役場に原本を保管する方式です。作成費用はかかりますが、検認手続きは不要です。最も確実な遺言で広く利用されています。
3.秘密証書遺言
自ら作成(署名以外はパソコン可)した遺言であることを公証人に証明してもらう方式です。「自筆証書遺言」と同様、検認手続きが必要です。

3.代襲相続

代襲とは、被相続人の子などが相続開始前に死亡したとき、または欠格・廃除によって相続権を失ったときに、その子の子(孫)がその子に代わって相続人となることをいいます。

4.遺産総額、課税遺産総額

課税遺産総額とは、相続税の計算において、各相続人の正味の遺産額の合計額から基礎控除額を控除して得られる金額のことです。正味の遺産額というのは、本来の相続財産と生命保険金、死亡退職金などの合計額に、被相続人の生前3年以内に各相続人へ贈与された財産および過去に相続時精算課税により贈与された財産等を加え、墓地・墓石・仏壇や一定金額内の死亡保険金、死亡退職金などからなる非課税財産と控除可能な債務・葬式費用との合計額を、控除して得られる金額のことです。

5.相続時精算課税

親から生前に贈与により取得した財産を、親が死亡した際の相続財産に取り込み、生前贈与・相続により取得した財産の全部を相続税の課税対象とする制度です。生前贈与により取得した財産の価額が2,500万円を超えた場合には、その超える部分については贈与を受けた年に20%の税率で贈与税を納めなければなりませんが、この贈与税は相続税の前払いで、親が死亡した場合の相続税の計算過程で精算され、納めすぎの贈与税は還付されます。

6.法定相続人の数

法定相続人の数は、相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に加えることが出来る養子の数は、次の通りです。
1.被相続人に実子がいる場合に、法定相続人の数に加えることができる養子の数は1人
2.被相続人に実子がいない場合に、法定相続人の数に加えることができる養子の数は2人

7.小規模宅地等の特例

小規模宅地等の減額特例とは、相続等により、被相続人の事業用に使用していた宅地等や居住用宅地等を取得した場合に、これらの宅地等の価額(相続税評価額)から一定の方法により計算した金額を控除して、相続税額を計算できる制度です。この制度により事業を受け継いだ相続人や被相続人と同居していた相続人について税額の軽減が図られています。

8.法定相続分

民法に規定する相続分を法定相続分といいます。法定相続分は次のとおりです。
1. 相続人が子と配偶者・・・・配偶者1/2、子1/2(配偶者が死亡している場合は子が全部相続)
2. 相続人が父母と配偶者・・配偶者2/3、父母1/3(配偶者が死亡している場合は父母が全部相続)
3. 相続人が兄弟姉妹と配偶者・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(配偶者が死亡している場合は兄弟姉妹が全部相続)

9.税率

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
-
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

10.配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、配偶者が受ける遺産に対する相続税の軽減措置のことです。配偶者が法定相続分を相続する場合には相続税はかかりません。また、配偶者が法定相続分を超えて相続しても、課税遺産額が1億6千万円以下である場合にはやはり相続税がかかりません。この配偶者の税額軽減の措置があるために、配偶者が遺産相続した場合には、遺産相続がかかってくるケースはほとんどありません。

11.相続の放棄

相続放棄は、相続人が相続権を放棄する方法です。したがって、相続放棄をした場合には、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます。

12.限定承認

限定承認は、取得した相続財産の限度で被相続人の債務を支払うことを条件として相続する方法です。
限定承認をすれば、被相続人が債務超過の場合には取得した相続財産の限度で債務を返済すればよいことになり、自分の財産を返済にあてる必要はありません。
限定承認は、財産と債務の額のどちらが多いか当初不明の場合に有利な方法です。

13.準確定申告

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。
しかし、年の途中で死亡した人の場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までの所得を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。

14.遺産分割協議書

遺産分割協議書の作成は、法律などで義務づけられているものではありません。しかし、書面に残されていないと、後日分割協議の内容についての争いが起こることも考えられます。また、不動産の相続登記をする場合には、添付資料として「相続を証する書面」が必要となりますし、相続税の申告書にも相続の内容を表す資料としてその写しを添付します。実際は遺言書がある場合を除き、必ず遺産分割協議書を作成することになります。

15.物納

相続で取得した財産のうち、土地や建物など換金が難しいものが大部分で、一時に金銭で納付することはもちろん、延納の方法を用いてもなお納付できない相続税額が残ってしまうということがあります。このような時、税務署長の許可を得て、有価証券や不動産の現物をもって相続税を納付する制度が物納制度です。

16.延納

長期にわたり分割で納付する方法のことです。相続税の納税は一括納付が原則ですが、一括納税ができない場合には、担保を提供した上で分割で納税することも可能とする制度です。

17.同族会社

同族会社とは、3つの株主グループが所有する株式の合計が、その会社の発行済株式総数の50%以上に相当する会社をいいます。
被相続人が会社を経営していた場合、所有していた同族会社の株式は相続財産になりますが、証券市場に上場されていない同族会社の株価は、相続税法等に定める一定の方法により評価しなければなりません。